AI チップの発熱量は、すでに空冷のファンで運びきれる水準を超えています。冷却方式が液冷へ移った時点で、設計課題は「エアフローをどう設計するか」から「水の経路をどう組むか」へ変わりました。その経路のなかで、コールドプレート自体は最も迷いの少ない部分です。チップの上に載せて熱を受け取る、それだけです。難しいのはその前後——冷却液を安定して送り込み、安定して回収すること。そして途中の継手が一箇所も漏れないことです。
谷騏(Good Gi)は、この経路上のホース、クイックディスコネクト、熱伝導材料を供給しています。本記事では冷却液が CDU からチップへ届くまでを分解し、どの区間を何で接続するのか、なぜ入れ替えが利かないのかを整理します。
コールドプレートはシステムのどこにあるか
コールドプレートは内部に流路を持つ金属プレートで、CPU・GPU・パワーデバイスの上に直接押し当てて使います。流路を冷却液が通り、熱を外へ運び出します。この方式が D2C(Direct-to-Chip、ダイレクトチップ液冷)で、直接液冷とも呼ばれます。装置ごと冷却液に沈める液浸冷却とは別の系統です。
熱源側から外へ向かって見ると、1個のチップの熱がラックの外へ出るまでに3つの界面を通過します。
| 界面 | 熱を伝えるもの | この区間の要点 |
|---|---|---|
| チップ ↔ コールドプレート底面 | 熱伝導材料(TIM):サーマルパッド、ギャップフィラー、相変化材料 | 金属面どうしを密着させても微細な空隙が残ります。空気はほとんど熱を伝えないため、柔らかい材料で空隙を埋める必要があります |
| コールドプレート ↔ 冷却液 | プレート内部の流路 | 流路が細く異物に弱いため、冷却液の清浄度が問われます |
| 冷却液 ↔ ラック外 | 配管、継手、マニホールド(分配配管)、CDU | 本記事のテーマ |

冷却液が通る経路の全体像。太線が主配管レベル、細線がサーバー内部レベルで、使用するホースが異なります。概念図であり実寸比ではありません
コールドプレートの下には、万一漏れた液を受けるためのドリップトレイ(液受けトレイ)を設け、細いホースで装置外へ導くのが一般的です。このホースの選定ロジックは冷却配管とは正反対なので、別記事にまとめています:液冷ラックのドリップトレイ、ドレンホースはどう選ぶか。
配管の姿を実際に決めているのは、その配管がどのレベルに置かれるかです。同じ冷却液を送っていても、ラック外の主配管とサーバー内部とでは、使う材料が二系統に分かれます。
主配管レベルとノードレベルの違い
以降で繰り返し出てくる用語なので、先に整理します。
| 主配管レベル | ノードレベル | |
|---|---|---|
| 位置 | ラック外:CDU ↔ ラック背面マニホールド、およびフリーアクセスフロア(二重床)下やラック間の配管 | ラック内:マニホールド ↔ 計算ノード、コールドプレートの入出口 ↔ ノード内部の細径配管 |
| 何に供給するか | ラック1本まるごと。数十個のチップが共有します | 単一ノード、場合によってはコールドプレート1枚 |
| 圧力と流量 | ポンプが送る全流量がここを通ります。システムのなかで圧力・流速とも最も高い区間です | 分岐後の1本。圧力も流量も下がります |
| 配管径 | 太い | 細い |
| 誰が触るか | 設備側の施工・定期メンテナンス | サーバー運用担当。モジュール交換のたびに触ります |
| 着脱頻度 | 低い。設置後はほとんど動かしません | 高い |
| 漏れた場合 | ラック全体、場合によっては列全体に影響 | 単一ノードに留まりますが、位置は通電中の基板の真上です |
| 材料選定の優先順位 | 耐圧、耐食、使用年数、機械的保護 | 可撓性、防振、細径、着脱のしやすさ |
主配管に求められるのは「長くもつこと」と「圧力に耐えること」、ノードレベルに求められるのは「曲がること」と「早く外せること」です。材料の分岐点はここにあります。
方式1:継手+ステンレスフレキシブルホース(主配管レベル)
| 設置場所 | 何をつなぐか |
|---|---|
| ラック背面マニホールド ↔ CDU(冷却液分配ユニット) | ラック1本分の給液・還液の主配管 |
| フリーアクセスフロア下、ラック間 | 固定または半固定の大口径送液配管 |
着脱式か溶接固定か
| 方式 | 特性 | 適した場所 |
|---|---|---|
| 着脱式(ねじ込み、フランジ、クイックディスコネクト) | 1区間だけ単独で交換できます | 定期メンテナンスが必要な箇所、将来レイアウト変更の可能性がある箇所 |
| 固定式(溶接) | 継手強度・シール性が最も高く、ガスケットの経年劣化がありません | 構造内に埋め込まれ、着脱の機会がほぼない固定配管 |
実務では併用が基本です。装置寄りのメンテナンス対象側は着脱式継手、中間の長い区間は溶接で通します。
端末形状の種類
着脱式か溶接かで決まるのはメンテナンス方法です。サプライヤーと実際に仕様を突き合わせるのは端末形状のほうです。ステンレスフレキシブルホースの端末は、大きく7系統に分かれます。
| 系統 | 記号 | 用途 |
|---|---|---|
| パイプ端 | PA、PB | 最も単純な直管端。現場で溶接または差し込みます |
| パイプ端(メタルシール) | RF、RM | 金属どうしを直接密着させるシール。弾性ガスケットを使わないため高清浄・高温用途に適します |
| パイプ端(Oリングシール) | OF、OM | Oリングによるシール。着脱が速く、シール材の材質を冷却液の組成に合わせる必要があります |
| 真空フランジ | KF、IK(ISO-K)、IF(ISO-F)、CF | 真空・半導体プロセス配管の標準インターフェース |
| 球面メタルシール | SF、SMN/SMR、SFN/SFR | 球面密着によるシール。NPT または R ねじと組み合わせ、既設配管に接続できます |
| 流体フランジ | FF | 液体搬送用フランジ。液冷の主配管でよく使われます |
| ユニオン継手 | WF、WM | 着脱時にホース本体を回さずに済む継手 |

16種類の端末形状と記号。1本のホースでも両端で形状を変えられます。接続先の機器インターフェースに合わせて選定します
フランジ系の KF、ISO-K、ISO-F、CF はもともと真空・プロセス配管用のインターフェースで、液冷システムではあまり使われません。液冷の主配管では、流体フランジ FF、球面メタルシール、パイプ端のいずれかに落ち着くケースが大半です。
端末サイズはインチ換算を踏襲します:4=1/4"、6=3/8"、8=1/2"、16=1"、20=1-1/4"、24=1-1/2"、32=2"。お見積り依頼では組み合わせコードで指定するのが一般的です——シリーズ記号(ブレード有無)- 端末1の記号 - 端末2の記号 - 全長 - 材質記号、たとえば FB-PA4-PA4-300-M1 のように表記します。記号はメーカーによって差があるため、仕様確認の際はインターフェース図面を添付するほうが確実です。
この区間にステンレスを使う理由
圧力と流量のレベルが違います。 主配管はラック1本分の冷却液を動かすため、水圧・流速ともにサーバー1台の内部とは桁が違います。金属フレキシブルホースは引張強度と耐圧性能に余裕があり、加圧時に管壁が膨らむこともありません。ゴムホースで同条件を満たそうとすると、肉厚と補強層を増やすか口径を上げるかになり、コストとスペースの両面で見合いません。
冷却液の清浄度を守る必要があります。 液冷システムでは純水(脱イオン水)やエチレングリコール水溶液が一般的です。配管内壁から溶出した不純物は循環系統を回り、最終的にコールドプレートの細い流路に溜まります。電解研磨を施した SUS316L は表面が平滑で不純物を出さず、系統全体で発錆やスケールの付着も起こりません。金属流体部品が出荷前に超音波洗浄とクリーン包装を経るのも同じ理由です——溶接部に残った金属粉は、システムに入れば異物そのものです。
継手のシール性が長期にわたって保たれます。 ここでの分かれ目は難燃性ではありません。補強層入りの EPDM ホース自体が UL94 V-0 相当であり、どちらの材料もデータセンターの防火要件は満たします。差が出るのは継手です。ホースバンドは締め付け力でシールしますが、ゴムは時間とともに圧縮永久ひずみが進み、締め付け力が落ちていきます。溶接継手にはこの問題がなく、ガスケットの経年劣化もありません。加えて金属ホースは脆化せず、施工時やメンテナンス時の打撃・擦過にも耐えます。稼働開始後は止めたくない箇所では、交換計画に入れずに済む側を選ぶのが通例です。
この区間の検収ポイント
ステンレスフレキシブルホースは「管を切って継手を締めれば完成」という部品ではありません。品質差は主に溶接と検査に出ます。発注前に、以下を購入仕様書に明記しておくことをお勧めします。
- 材質グレード:SUS316L、SUS304L、または 2205 二相ステンレス鋼。マニホールドや主管には 310S、602CA といったグレードが挙がることもあります。冷却液の組成と水質に合わせて決めるもので、グレードが高ければ良いというものではありません
- 溶接方法:レーザー溶接、TIG 溶接、ろう付けのいずれか。端末形状によって変わります。管と管の突き合わせを自動溶接機で行うかどうかは、同一ロット内の溶接品質の安定性に直結します
- 端末形状:上表の7系統。接続先の機器インターフェースを先に確定してください。ここが合わないとロット全数が不適合になります
- 耐圧と軸方向の伸び:常用圧力と破壊圧力をそれぞれ明記してもらってください。あわせて加圧時の軸方向伸び率を必ず確認します。フレキシブルホースは環状の波形(コルゲート)で可撓性を得ているため、加圧すると波形が押し広げられ、ホースが軸方向に伸びます。両端を固定して伸びを拘束すると、伸びは横方向に逃げて曲がり変形になります。このデータは見積書にはまず載りませんが、配管時にどれだけ余長を取るか、両端を固定してよいかを直接左右します。伸びを抑えたい場合はブレード(編組)付きを選ぶことになりますが、その代償として可撓性が下がり、曲げ半径は大きくなります。報告書を取り寄せる際は、試験サンプルがブレードなしかブレード付きかを必ず確認してください。両者は伸びの挙動がかなり異なります
- 検証報告書:ヘリウムリークテスト、破壊耐圧、圧力損失、気密試験、高低温サイクル、振動・揺動疲労試験、金属組織(ミクロ組織)観察。どの項目が必要かを事前に取り決めます
- 清浄度処理:出荷前の超音波洗浄とクリーン包装の有無。溶接部に残った金属粉はシステム内では異物であり、最後に詰まるのはコールドプレートの流路です
これらは、こちらから指定しない限り見積書に記載されることはまずありません。仕様書の段階で確認しておく項目です。
方式2:タケノコ継手+EPDM ホース(ノードレベル)
| 設置場所 | 何をつなぐか | 一般的な継手形式 |
|---|---|---|
| コールドプレートの入出口 ↔ ノード内部の分岐配管 | このコールドプレート1枚が使う1系統 | タケノコ継手+ホースバンドまたは結束バンド |
| サーバートレイ内の GPU/CPU コールドプレートモジュール ↔ 筐体バックプレーン | モジュールとラックのインターフェース | ブラインドメイト式クイックディスコネクト(UQDB)。トレイを挿し込むだけで接続されます |
タケノコ継手(ホースニップル)は、竹の子状の段付き部にホースを差し込み、外側からホースバンドで締め付けてシールする構造です。構造が単純でスペースを取りません。この層は上流でラック背面の水冷用分配マニホールド CDMにつながり、マニホールドが CDU から送られた冷却液を各ノードへ分配します。

ラック背面の分配マニホールドと対応するクイックディスコネクト。手前は端末形状の異なる継手です

補強層入り EPDM ホース GRAH。管壁の中間にある繊維層が耐圧構造で、可撓性を保ったまま常用圧力を支えます
この区間にゴムホースを使う理由
スペースがありません。 AI サーバーの基板は部品密度が極めて高く、配管は数センチの隙間でメモリやハーネス、ブラケットを避けて通す必要があります。補強層入り EPDM ホースならこのスケールでも曲げられますが、金属ホースでは曲がりきらず、組付け時の調整代もありません。
振動があります。 ファンとポンプの運転中は微小な振動が続きます。ゴムホースは振動を吸収するため、応力がコールドプレートや直下のチップパッケージへ直接伝わりません。金属ホースは剛性が高く、振動が管壁を伝わっていくため、最終的に負荷を受けるのは経路の最も弱い部分になります。
メンテナンスで外す前提です。 ノードレベルのモジュールは交換されます。この層の継手には液冷用クイックディスコネクト UQDやブラインドメイト式クイックディスコネクト UQDBを使うのが一般的で、サーバートレイを挿し込むだけで接続が完了します。配管を減圧してから外す必要もありません。

液冷用クイックディスコネクト UQD。液だれしない設計で、加圧された状態でも着脱できます
補強層入りホースの選定要点は、耐圧と冷却液への適合性です。EPDM はエチレングリコールに耐え、補強層が使用圧力を支え、UL94 V-0 相当の難燃グレードがラック内部の防火要件に対応します。使用温度は −40 ~ +120°C で、液冷系統の運転条件をカバーします。
2つの方式の比較

左:主配管レベル、継手は溶接が中心。右:ノードレベル、タケノコ継手の返し部をホース内に差し込みホースバンドで締め付けます。概念図であり実寸比ではありません
| 方式1:継手+ステンレスフレキシブルホース | 方式2:タケノコ継手+EPDM ホース | |
|---|---|---|
| レベル | ラック外の主配管、マニホールド ↔ CDU | サーバー内部、コールドプレート ↔ バックプレーン |
| 耐圧 | 高:常用圧力は 5 bar 前後、破壊圧力は 150 bar クラス | 中 |
| 配管径 | 太い | 細い |
| 選定の要点 | 耐圧、耐食、冷却液を汚さないこと、難燃性 | 可撓性、防振、耐エチレングリコール、難燃性 |
| 継手形式 | 溶接が中心。メンテナンス側は着脱式 | タケノコ+ホースバンド、クイックディスコネクト、ブラインドメイト式 UQDB |
| 着脱頻度 | 低い | 高い |
2つの方式に優劣はなく、役割分担です。経路全体で本当に判断すべきなのは、境界がどこに来るか——金属ホースからゴムホースへ切り替わる位置で、通常はラック背面またはドロワー入口にあたります。
設計時につまずきやすい4つの論点
主配管をすべてゴムホースにできますか?
技術的には可能で、実際にそう構成しているデータセンターもあります。補強層入り EPDM ホース自体が UL94 V-0 相当でエチレングリコールにも耐えるため、別途保護スリーブを被せたり金属管路に通したりする必要はありません。
ただし主配管については、当社としてはステンレスフレキシブルホースと溶接継手を推奨します。差が出るのは「組み立てられるかどうか」ではなく、時間が経ってからです。
- 清浄度:ゴムは温度と使用時間に応じて微量の物質を溶出し、気体の透過も完全には防げません。冷却液は密閉された系統内を何年も循環するため、それらは最終的にコールドプレートの細い流路に蓄積します。電解研磨した SUS316L の内壁は不純物を出さず、この点でゴムは追いつけません。
- シール:ホースバンドとタケノコ継手は締め付け力に依存します。ゴムは圧縮永久ひずみが進むと締め付け力が落ち、これが主配管の継手からにじみが出る最も多い起点です。溶接継手には締め付け力の低下もガスケットの経年劣化もありません。
- 交換周期:ゴムホースは交換計画に組み込む必要があり、交換には停止またはバイパスが伴います。金属ホースは通常、交換計画の対象になりません。
代償はコストです。同じ主配管クラスで比較すると、ブレード付きステンレスフレキシブルホースの単価は EPDM の数倍になるのが一般的です。そのため実務では区間ごとの使い分けが定着しています——着脱が頻繁でスペースの厳しいノードレベルは補強層入りホース、長期間動かさない主配管は金属+溶接、という組み合わせです。
サーバー内部にステンレスフレキシブルホースは使えますか?
第一の制約は曲げ半径とスペース、第二の制約は振動の伝達です。固定されていて、かつ高温対応が必要な特殊な箇所を除けば、ノードレベルで金属ホースを使う必然性は高くありません。
冷却液が純水かエチレングリコールかで、材料選定は変わりますか?
変わります。エチレングリコール水溶液とゴム・シール材の適合性は個別に確認が必要で、シール材の材質(EPDM、FKM、FVMQ、FFKM、NBR、HNBR)は冷却液の組成に合わせて選定します。金属側で効いてくるのは塩化物イオンと導電率です。純水は金属によっては一般的な認識とは逆の腐食挙動を示すため、材質グレードは実際の水質に基づいて決めてください。
ドレンホースと冷却配管は同じものを使えますか?
推奨しません。冷却配管は全長にわたって加圧されますが、ドレンホースは重力式でほとんど圧力がかからず、口径はドリップトレイに残された高さで決まります。耐圧仕様の補強層入りホースをドレンに使うのは過剰仕様で、価格面でも不利です。この区間のトレードオフはドリップトレイのドレンホースはどう選ぶかにまとめています。
経路全体で使われる部品
2つの方式を個別に見てきたので、最後に経路全体を1つの表にまとめます。自社システムでどの区間が未確定かを確認する際にお使いください。
| 経路の区間 | この区間で使われる部品 |
|---|---|
| CDU ↔ マニホールド 主配管 | ステンレスフレキシブルホース、硬質配管、端末継手 |
| マニホールド本体 | 水冷用分配マニホールド CDM |
| マニホールド ↔ ノード | 液冷用クイックディスコネクト UQD、ブラインドメイト式クイックディスコネクト UQDB |
| ノード内部の配管 | タケノコ継手、補強層入り EPDM ホース、ホースバンド |
| チップ ↔ コールドプレート | 熱伝導材料(TIM) |
| ドリップトレイの排水 | シリコーンチューブ SRT 難燃タイプ |
| 経路沿いのハーネス保護 | コルゲートチューブ、熱収縮チューブ、ガラス繊維スリーブ |
区間ごとに選定条件は異なります。主配管は圧力と使用年数、ノード内部はスペースと着脱性、ドレンホースはトレイに残る高さ、ハーネス保護は温度と難燃グレード。同一システム内で、これらすべてを1種類の材料でまかなえるケースはほとんどありません。